2013年1月5日土曜日

ミッドナイト・イン・パリ(2011年)

夏にはまったカルヴァドス・ジンジャー。


 あけましておめでとうございます。
 真冬に夏の話で恐縮ですが、昨年の夏はカルヴァドス・ジンジャーにはまってました。

 マルセル・カルネ監督『港のマリー』、タル・ベーラ監督『倫敦から来た男』、アキ・カウリスマキ監督『ル・アーヴルの靴みがき』、そして、ウディ・アレン監督『ミッドナイト・イン・パリ』を見たら、どの映画にもカルヴァドスが出てきて、飲んでみたくてたまらくなってしまったのがきっかけです。

 ちなみに、この冬は何にはまっているかと言うと、「日本酒はどんな酒であれ、燗して飲むのが一番美味しいよ!」とふれまわるのに凝ってます。


 


 ウディ・アレンの新作を楽しみにして、映画館へ行くのは久しぶりでした。
 学生時代の私は、ケラのラジオ番組を愛聴しており、彼が紹介するものは何でも見たり聞いたり読んだりしていたのですが、テクノポップ、ニューウェーブ、マルクス・ブラザーズ、バスター・キートン、モンティ・パイソン、Mr.Boo、小林信彦…、そしてウディ・アレンもそのひとつでした。

 しかし最近は「忙しいなかウディ・アレンの新作を見に行くぞ!」という気合いを失っていました。

 それがこの『ミッドナイト・イン・パリ』で久々に重い腰を上げた理由は、なんといっても主演がオーウェン・ウィルソンだからです! 『ライフ・アクアティック』を見て以来、オーウェン・ウィルソンがこの世に元気に生きている、と思うだけで、泣けてきます。

 そんなオーウェン・ウィルソンが、ウディ・アレン作品に出る。
 それは見に行かねばなりません。


 


 主人公は、ハリウッドで脚本家として活躍中のギル(オーウェン・ウィルソン)です。

 ギルとそのフィアンセのイネズ(レイチェル・マクアダムス)は、イネズの父(カート・フラー)の出張に便乗してパリ旅行中。イネズ一家は保守的な金持ちで、パリに移住して小説を書きたいと思っているギルと、何かと意見が合いません。

 ウンザリしたギルが真夜中のパリを散歩していると、自動車が一台やってきて、彼を誘います。自動車に乗り込んだギルが連れて行かれた先は、ヘミングウェイやフィッツジェラルド夫妻、コール・ポーター、ピカソが生きている一九二〇年代のパリで……というコメディです。


 


 ヘミングウェイ、スコット・フィッツジェラルド、コール・ポーター、ガートルード・スタイン、アリス・B・トクラス、ダリ、ピカソ、ゴーギャン、ルイス・ブニュエル、マン・レイなどなど有名人がいっぱい出て来て楽しいのですが、見てみれば『カイロの紫のバラ』のような、いつものウディ・アレンの“あちらとこちら”の話でした。

 映画が、橋に始まり、橋に終わるのも暗示的です。

 オーウェン・ウィルソンがちょっと老けてくたびれていて、同じウディ・アレン監督作の『ギター弾きの恋』のショーン・ペンや『マッチポイント』のジョナサン・リース=マイヤーズより魅力に欠けるように感じられましたが、最後の橋のシーンは何度見ても好き。
 あのシーンは、観客みんながギルと同じ気持ちになって、胸がいっぱいになるんじゃないかと思います。


 


 小説を書きたいギルと金持ちのワガママ娘のイネズというカップルが主人公であること、ウディ・アレン作品を貫くテーマを考えても、スコット・フィッツジェラルドと深く絡む話だったら二重三重に面白すぎる! とわくわく期待しましたが、ウディ・アレンはヘミングウェイの方が好きみたいです。

 OLとしては、イネズの旅行鞄セットがゴヤールで揃ってるところに目が釘付けでした。『シャレード』のオードリー・ヘップバーンの旅行鞄や、大地真央と松平健の新婚旅行の旅行鞄がルイ・ヴィトンで揃っていたのは見ましたが、ゴヤールで揃えているのを見るのは初めてです。


 


 現代のパリに生きるギルは、イネズ一家やイネズの元カレの大学教授と一緒に、リッチな建物の屋上で開催される品評会に参加して、チャラチャラと赤ワインを飲みます。しかし一九二〇年代のパリで、ギルが自らショットグラスに注ぎ、そのままガブッと飲んでいたのは、カルヴァドスでした。

 しかしどの酒屋に行っても、映画の中のカルヴァドスのように、黒蜜のようなカラメルのような、人を誘うような濃い色をしたものは見つけられません。そこでまずはなじみのバアへ行って、ギルやノルマンディの漁師やル・アーヴルの刑事みたいに、常温でそのまま飲んでみました。


 


 気持ちだけは、ショットグラスをカウンターにガン!と叩きつけて、「カルヴァ!」と威勢よくおかわりを求めたかったのですが、一杯を飲みきるのが大変なくらいカルヴァドスは強い酒でした。

 酒にとても詳しくて、いつも美味しいシングルモルトや飲み方を教えてくれる女の子の店員さんに相談してみたら、「カルヴァドスをジンジャーエールで割るカルヴァドス・ジンジャーが美味しいですよ」とのこと。確かに林檎と生姜の香りがよくて感激してしまい、今年の夏は家でもよく飲みました。ジンジャーエールは安いものでなく、生姜の味がしっかりしてる手作り風のものを使った方が美味しいです。


 

2 件のコメント:

  1. ご無沙汰しております。
    私も、この映画観ました!
    詩に興味のある私としましては、この映画にガートルードシュタインが出ているのが興味深かったです。

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  2. 私も ゴヤールに釘付けでした。嬉しいです。

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