2009年6月7日日曜日

ショーガール(1995年)

自分ではもう買わないぞ! クリスタル。 


 ロシア語を学んでいる友人の誕生日に悪ノリし、お祝いのために、アレクサンドル2世が作らせたというクリスタルを買いました。確かに美味しかったのですが、私ごときがシャンパンを飲んでも、そりゃ何だって美味しく嬉しいので、こんな贅沢品もう二度と自分では買わないでしょう。
 ルイ・ロデレール社のシャンパン、クリスタルが出てくる映画については、複数ある映画とワインについての本の中でも『映画の中のワインで乾杯!』(東急エージェンシー出版部)が最もマニアックに、たくさん紹介しています。しかし見事に『ワーキングガール』『アイラブトラブル』『ファーストワイフクラブ』『フォールームス』など、ろくでもない映画の成金アイテムとして登場してばかり…。そんなバブリーな存在の悲しさも気になって一度飲んでみたかったのでした。





 クリスタルを作らせたのがロシア皇帝のアレクサンドル2世という話は面白いのですが、なんだか出典も詳細もよくわかりません。暗殺防止のために瓶を透明にしたとか底を平らにさせたとか伝える人もいれば、他のシャンパンと区別できるように瓶を透明にさせたという話もあり……。『死ぬまでに飲みたい30本のシャンパン』(講談社)によればルイ・ロデレール本社のホールにアレクサンドル2世の銅像が飾ってあるのは確かみたいです。





 エドワード・ラジンスキーの『アレクサンドル2世暗殺』(日本放送出版協会)を読んでも、クリスタルの話は出てきやしませんでした。でも「そりゃ瓶も透明に底も平らにしたくなるわ」という時代背景はよくわかります。


 


 クリスタルが登場する映画のひとつ、ポール・バーホーベン監督『ショーガール』もろくでもない一本なのですが、女の子の根性と友情の描きぶりが少女漫画のようで何度見ても燃えます。立派なダンサーになりたいストリッパーのノエミ(エリザベス・バークレー)と、ラスベガスのヌードショーのトップダンサーのクリスタル(ジーナ・ガーション)が、トップの座を争って熾烈な戦いを繰り広げるという話で、下品でばかばかしくてどうしようもないのに、まったく憎めない楽しい映画です。


 


 ジーナ・ガーションとエリザベス・バークレーがクリスタルを飲むのは、ラスベガスのスパーゴという店です。背景が書割みたいで変だなあと気になったので調べてみたところ、スパーゴはショッピングモール内にある店だそうで、青空は本当に書割(モールの壁)でした。スパーゴはアカデミー賞公式シェフのウォルフギャング・パックが経営する有名店だそうです。




 そのスパーゴで、体型に気を配らなければならないヌードダンサーの女子二人が「玄米と野菜の食事なんて犬のエサ以下」と火花を散らしつつ意気投合するところが痛快です。さらに二人は過去の貧乏生活時代に犬のエサを食べたこと、中でもドギーチャウが好きだったことを告白し、ますます意気投合した後に、ゴージャスなクリスタルを飲むのです。犬のエサからクリスタルへなだれ込むハデさ・下品さがたまりません。まさに姫川亜弓の前で北島マヤが泥まんじゅうを食べる場面のようなケレン味!?(ちょっと違う?)